ご挨拶

 2007年3月に設立しました国際公共政策研究センター(CIPPS)は、以下の問題意識を持って活動を行います。


 第一は、国際的な公共政策を考える上での覇権の行方と、日本の路線の絞り込みです。20世紀はアメリカが覇権を握っていた時代でしたが、21世紀は別の時代に入りました。かつて米ソ冷戦時代に東側のリーダーであったロシアに対して、グルジア紛争をきっかけに再び覇権を狙っているのではないかとの疑問が高まりました。また、インドや中国などのかつての開発途上国が大きな役割を果すようになってきました。その一方で、人口減少社会に入り、高い経済成長率が望めない日本は世界の中での存在感が小さくなる恐れがあります。
 地球温暖化対策をはじめとした革新的技術の開発、またこれを前提とした世界をリードできる新しい情報の生産といった切り口を磨ぎすませつつ、世界への日本の関与の仕方を考えていきたいと思います。


 第二は、国際社会における争点を地球規模で見なければいけない時代に入ってきたことに関連があります。原油価格や穀物価格の高騰というテーマは、従来は国連やIMF、WTOといった国際機関が取り扱っていましたが、そうした時代は過ぎてしまったと言えます。国際機関がその有り方が根底から問われているともいえます。国際社会における地球規模での争点をいかなる主体がどのように取り扱うのかを考えねばなりません。


 第三に、経済上の命題を論じてきた前提が急速に変わり始めていることをどのように捉えるのかという視点があります。原油価格の高騰を反映して取引費用が高くなり、経済上の命題のいくつかに明らかに変容が訪れています。EU、NAFTAといった国家を超えた地域統合体は、取引費用の高騰により統合の範囲を広げれば広げるほど利点があるというわけではないことに気づき始めています。また、人件費が安い、産業集積がある、コストが抑制できる、といった地域ごとの利点の活用を前提とした供給体制の構築を目指してきたサプライ・チェーン・マネジメントですが、その前提さえも覆される可能性があります。新しく命題を作りなおすこと、また、政策の優先順位を並び替えることも重要なテーマです。


 第四に、国際問題を見直すにあたって歴史的な因果関係をあらためて考慮することも重要な視点です。例えば、バイオエタノールの生産に力を入れているブラジルと、かつて太古の時代は同じ大陸であったアフリカとは似た土壌なのではと言われています。すなわち、サバンナ地方でサトウキビを作ることによって、バイオフュールのみならず食糧生産に刺激を与えることが出来るのではという命題が出ています。アフリカの問題をブラジルとの連携を通じて考えることでソリューションを生み出すという、これまで思ってもみなかったような発想も求められるように思います。
 また、中東問題をとってみますと、紛争の続くイラク、テロリストとの関係が噂されるシリアなどをはじめとしてアラブ地域の多くは、第一次世界大戦前はオスマントルコの領土でした。オスマントルコが消滅する過程で、欧米の力によって人為的な国境線が作り上げられ、アラブ湾岸諸国も成立しました。長い中東の歴史を考える中で、20世紀初頭の地図もそれなりの根拠を持って、思い浮かべる必要があると言えましょう。
 さらに、興味深いのは、20世紀にトルコを設立したケマル・アタチュルクが国家原理とイスラム教を区別しました。イランでは、1979年にイラン・イスラム革命が起きると、国家とイスラム教を分離しようとしていたパーレビ国王が追放され、逆にイスラム教と国家を一体化させた体制が成立しました。二つの理念型は対極といってもいいでしょう。このように考えると、これからの中東秩序の形成において、イランとトルコのもつ影響を考える必要があるように思われます。
 このようにして、これまでの歴史的な重みを考慮した中で国際問題を見てみることで、新たな糸口を発見する必要があると考えます。


 CIPPSとしましては、ビジネスの世界に携わる多くの会員企業の皆様からサポート頂きながら、上記のような視点を持ちつつ、持続性あるメッセージを国内外に発信していくつもりです。


国際公共政策研究センター
理事長 田中 直毅

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